ホタテは鮮度が重要であり、 長期保存には適していません。
そのため、まずは2年ほどで実施可能な短期的な支援策を考える必要があります。
中国への輸出ができない場合、国内需要を増やすことに焦点を当てるべきです。
ただし、補助金を使ってホタテの価格を下げるのは得策ではありません。
なぜなら、消費者は価格が一度下がると、元の価格に戻ったときに購買意欲を失ってしまうからです。
唯一の解決策は、『おさかな券』のような金券を配布することです。禁輸によって影響を受けているのはホタテだけではありません。水産物と交換できる金券を配布することで、一定の効果が期待できます。
このように時間を稼ぎながら、長期的な対策も必要です。
具体的には、中国以外の輸出先を確保することです。
ヨーロッパやアメリカではホタテの貝柱の需要がありますので、中国で加工した後に輸出していました。
中国の代わりとして、例えばベトナムなどに拠点を移すことは可能です。
ただし、衛生的な加工体制の確立と、中国の需要を他国にシフトするには時間がかかります。最低でも5年は必要でしょう」
補助金として1007億円が投入されることには、「これまで十分に利益を得てきたのに」といった批判もあり、猿払村の漁師たちも社会の声に敏感です。猿払村漁協の組合長の息子は、次のように切実に語りました。
「チャイナリスクを甘く見ていました。それが問題の根本です。
販路を拡大する方法を話し合っていた矢先に、このような事態になってしまいました。批判には言い返す言葉がありません。
メディアへの露出も後悔しています。一昨年、マツコ・デラックスの『月曜から夜ふかし』で取り上げられたことが大きかったです。
漁師としての本音は、日本の人々に手頃で美味しいホタテを食べてもらいたいということです。
しかし、現実はそうなっていません。来年以降、どうなるのか不安です。村としてホタテだけで続けていくことはできるのでしょうか。
様々な課題に直面していると感じています。
現在、猿払のホタテ漁師たちは岐路に立たされています。
出典:「週刊現代」2023年11月11・18日合